パルメザンの感想記事まとめ

ストップモーションを使用している作品や、アートアニメーション、映画、映像作品の感想、解釈、妄想などを自分用に纏めるためのもの。 ここと同じ趣旨でやっているTwitter→@QNpzcHeyiagTnVV

ブラザーズ・クエイ短編集Ⅱ

「ストリート・オブ・クロコダイル」
大型の機械や足踏みミシンなどが稼働している状態をずっと眺めていられる人は、好きな映像だと思う(私も好き)
ヤン・シュヴァンクマイエルもそうだけど、話がよく理解出来なくても、ただ見てるだけでも楽しい、不思議と快感を得る映像を作れるのって、地道にとんでもない才能なんでは
なんとなくだけど、この兄弟は物の構造に興味のある子が時計を分解して親にめちゃくちゃ怒られた、みたいな事が何回もありそうだな・・・
そういう、子供じみた解析欲や分解、また組み立て直すしてパーツとパーツがピッタリハマる時の快感に満ちてる映像だと思う

撮影の小道具にベッタリこびりついてるカビとか、ホコリとか、どうやってつけてるんだろうな
まさか、作った後に放置して自然と着くようにしている?
カビはまだ分かるがホコリは撮影準備期間を考えると難しいのでは

綿毛とか氷とか、時間が経つと変化してしまう素材を使うのが好きだよね
あと針とかも・・・

男性ががらんどうの人形頭のテーラー達に取り囲まれて、頭を人形達と同じようなものにすり替えられてしまう
あっじゃあ周りのがらんどうの人形頭のテーラー達ももしかして、頭を変えられただけで元々はもっと別の人で、こんな無個性な感じじゃないのか・・・?
と思っていたところに、あれ?元の男性の頭に戻っている、というシーン

なんか視聴者の思っている通りになんかなってやんないよ、という製作者の意地を感じる
(男性が人形達に取り囲まれている間に、自分も同じような無個性な存在になってしまった錯覚に陥ったのかもしれない)

あー映像に生肉を使うのめちゃくちゃ、ヤン・シュヴァンクマイエルからの影響を感じる
いい感じにキモチワルイ

人形達と男性の絡みが、どことなくエロティック
ブルーノ・シュルツの大鰐通り、そのうち読みます
(お前いつもそれ言ってるな)

ちなみに、この作品と原作について、興味深いものがあったので、自分のツイートで恐縮ですがこちらを貼って起きます。
https://twitter.com/QNpzcHeyiagTnVV/status/1531784218614767618?t=M-ZmkBthnvRSdI0R_x89Tw&s=19

「失われた解剖模型のリハーサル」
額にある、一本だけ粗末な毛の生えた出来物を、ずーっといじっている人形
これまでの作品では、一目で人間とわかるぐらいの要素を残した人形が登場していたが、この作品では体が、グネグネと曲がった針金で表現されていて、顔にも赤子のような無垢な輝きがある目玉が一つあるだけで、他の器官は潰れているような印象、まるでオブジェのような風貌をしている
辛うじて人がたと分かるくらい
普通の人でも固まったカサブタを弄ることぐらいはあるが、それよりも、少し脅迫的な観念がありそうだ
弄っているうちに、その鼻毛のような長さの毛が抜けてしまう
途端に周りのものから、黒く細長いもの(毛というよりは線)が伸びてくる
うーん、この人形にとっては、この短い毛はただ一つの熱中できるもの、財産で、それが抜けてしまったから、代わりに周りのものからどんどん生えてくればいいのに!という願望なのかなぁとぼんやり思った

黒いストライプ模様とか、分厚いボール紙でいかにも作りました感前回の段差とか好きだね
なんなんだこりゃあ、2人(男女?)の生活を窓から監視して書き記している?
そのペンを持ち高速で動いている手がイラストで、コラージュのような要素を加えているのがいい

たまに現れる白く小さい卵は、部屋の中の男女の、子宝に恵まれる事や子供が欲しい願望を表している?
ずーっとベッドの中にいる女性に見える方が、すこしふしだらに見える開脚をして、男性が振り子のように女性の股の間に、卵を揺らす
んー、男性の睾丸から精子が作られて、性交渉、着床、妊娠という事の暗喩かな
という事なら、まさかのセッ●スしないと出られない部屋なのでは・・・
阿呆な事言ってるけど、なんかこう少子化対策で政府の役人監視の元、選ばれた男女は性交渉しなければならない、とかは飛躍しすぎかなぁ・・・
もしかして、出来物を弄ってる人形は、これから産まれてくる2人の赤ん坊で、けれども五体満足で産まれてくるのは叶わなくて・・・みたいな感じなのかもしれない

「スティル・ナハト─寸劇」
金属製の細かい繊維を、磁石を使って動かしているのか、面白い
新しいストーリーを見る度に思うんだけど、タイトル含む、始まる前のスタッフロールがどれも違うので、めちゃくちゃ気合い入ってんな
撮る度にスタッフ変わるので、その度に作るんだろうが、世界観、雰囲気に合うもので、前のものと被らないものだと作るの大変そう
なんかそんなこと思ってたら、直ぐに終わっちゃった!

「スティル・ナハト2─私たちはまだ結婚しているのか?」
ハート(まさかこの2人の世界にハートが出てくるとは思わなんだ)、兎のぬいぐるみ、ソックスと可愛らしい靴を履いた少女の足
これだけで、単純な自分は不思議の国のアリスにしか見えないんだけど
なぜ、少女は足しか移されないのか→そろそろ生理が来る年頃で、自分の体のことが気になってしまう
棘の冷えた指と、ハート型のラケットのようなもの→排卵の痛み
そして煩いハエのように飛びまわる卵→卵子の象徴
少女の動きを真似する兎の滑らかな動きがすごい、可愛い
ドアの向こうからバンバンと人の手が→少女が大人になることを待ちわびている人達、だがまだ少女は大人になどなりたくなくて、少女の幼児性を表している白兎が反抗してドアを叩き返す、みたいな
あと、海外ではどうなのかはよく分からないんだけど、アリス的なモチーフでボーダーソックス(この作品だと日本のサブカル作品でよくある黒白ニーハイとかではなく、子供が普通に履く柄の短いソックスだが)というと、原作やモデルになったアリス・リデル本人よりかは、商業的なキャラクターのアリスというイメージがあるので、人の手で魔改造されすぎて、成り果てたアリスを食い物(また新しいデザインや概念をくっつけて、ビジネスにしようと)にしようとしてる人達なのかも・・・
原作(地下の国)は、黒髪おかっぱ黄色いドレスなのに、テニエルの挿絵版が有名になったので金髪ブロンド、青色ドレスのほうがすっかり有名になったし、でずにーにの映画やら、諸々の作品のキャラクターデザインを経て、いまの世の中に氾濫するアリス像はめちゃくちゃだし、そこもアリスというものの魅力の一つなんだろうけど・・・
だからこそ、このスティル・ナハトでは、少女の下半身しか映さなかったのかも
よく分からなかったけど、自分はこう感じた
この2人の作風に対して、考えることを放棄してんのかと言われるくらい陳腐だし、少女の初潮を神聖視してる気持ち悪いおっさんみたいな解釈になっちゃった

「スティル・ナハト3─ウィーンの森の物語」
うーん、これは本当によく分からなかった・・・

「スティル・ナハト4─お前がいなければ間違いようがない」
あのハートのラケット再び、これは「スティル・ナハト2」の後の話なのかな
(この2人の作品で時間軸の定義というものはどれぐらいまで通用するのか分からないが)
少女の足の間から、血が垂れてくる。あーやっぱり生理なのかな
鍵穴から部屋を覗く、髑髏のような恐ろしげな人物
少女の卵(卵子)か、少女の無垢性か体を狙っている不審者?
虫かご(鳥かご?)に入っている卵を狙おうとするが、兎によって阻止される。
最後に、兎も少女の靴の踵に開いた鍵穴から何かを覗いている
なんだか目付きがオス全開になってしまっているようで、この兎ももう少女を守ってくれる存在ではなくなってしまったのかな。

Ⅰと比べるとⅡは、アクセル全開!という感じだった
Ⅰの時点ではまだ(比較的)分かりやすい方で、エンジンかけたばっかりだったんだ