パルメザンの感想記事まとめ

ストップモーションを使用している作品や、アートアニメーション、映画、映像作品の感想、解釈、妄想などを自分用に纏めるためのもの。 ここと同じ趣旨でやっているTwitter→@QNpzcHeyiagTnVV

イギリスのアニメーターMark・bakerの作品、「The village」感想。〜超超超監視社会がもたらすもの〜

2022年、4月17日現在で、YouTubeのMark・baker、officialアカウントhttps://youtube.com/channel/UCPL7GMBp3ZqVFxSQDe8n72Q
で無料公開されている短編アニメーション三作品を干渉した際の感想。

(作品自体は、2021年の6月か7月ごろに鑑賞したが、この感想を書くために再度視聴)

Mark・bakerは、イギリスのアニメーター、プロデューサーで、短編作品「The hill farm」、「The village」、「jolly roger」がオスカーにノミネート。

また、ペッパピッグとベンとホリーのリトルキングダムの監督の一人らしい・・・(※Wikipedia情報)
(確かにちょっとキャラクターデザインが似ている?)

「The village」~超超超監視社会がもたらすもの〜

冒頭からありんこみたいな虫が登場、いやなんか一匹だけ、 滅茶苦茶力持ちだなと思ってみていたら、案の定、巣穴に入りきらずに、巣にエサを持ち帰るあり達の流れを見事に妨害。

はじめて見た時は、ふっwとなったが、一回通して最後まで見たあとに、もう一回このシーンを見るとなんか、大きなものを抱えている(大変な苦悩を抱いている、もしくは、大きな志を抱いている)者は、その行動の結果によって、普通の人たちの定常の流れを無視し、妨害してしまう時がある、それは普通の人たちによって、理解されないまま、邪魔だからといって放置されてしまう、というような皮肉が込められている感じもするなぁ・・・。(なんかそういう暗喩に富んだ作品の見すぎで、制作側が本当に何の気なしに入れたシーンで、勝手に深堀してそれにハマってる可能性が充分あると思う)

この作者は、数学的に美しい図形のイメージをアニメーションで動かすのが好きなのかな?という印象を受ける
パウル・クレーの絵とかも好きなので、こういうタイプのキャラ造形は好みだな

村の建物(円形に配置されている集合住宅のようなやつ)の外で、一人木の苗を植える仕事の男性登場
この人は、眼鏡をしていて、見た目もいかにも本好きそうな感じの大人しそうな男性なのだが、これは完全に、村の中で飛び抜けて知識がある人や、インテリ層であることを表していると思う。

「The village」タイトル回収 デーデーン⤴︎ ⤴︎⤴︎デーデーン⤵︎⤵︎⤵︎(荘厳なBGM) 音楽も大変にいい(音楽的教養が全くないやつの駄目な感想)

いや、こんなに相互監視に有用な建物ある????????
人権どころか日照権とかもやばそうでない?
昔にこの村を起こした人らは、一体何考えてこんな縦物作ったんだよ。
円卓の騎士じゃねーんだぞ

まぁ、大体の時代イメージがとりあえず現代ではなさそうだし、まだまだ田舎の未開さが抜けきらない土地なんでしょうな。(自分も田舎住みなので少し分かる)

わー掃き掃除しているだけでこんなにジロジロ見られるなんてやだなー、挨拶するでもないし、おばさんが窓から見つめる人達に視線をやると、さっと戻るし。ほんとに嫌だな、他人を監視するしか娯楽のない所なのかな

こういう所では読書とか、一人で済む娯楽が大変に有益だし、便利だけど・・・。
そう考えると、やっぱさっきの眼鏡男性は、村の他の人間に対して、極力なアドバンテージがあるのかもな〜。

掃除するフリして実をとって行った木は、たぶん村の共同の木、というかみんなで恵みを享受する木なのかな?
おばさんの持ち物ならこんなにコソコソせずに、堂々と身をもぎ取ればいいし。

村の外で眼鏡男性は、一人熱心に畑に木を植えてるけど、他の人は村の中のただ一本しかない木にご執心なのね。
自分は、糧を得たいけど、その為に対価や労力は
払いたくない?
(原作攻殻の少佐の台詞「種(ギム)を蒔かずに実(フクシ)を得るのか?」みたいなやつを思い出すな・・・)

司祭(牧師?)的な人登場、教会に入るやいなや、隠れてこそこそとぶどう酒をまるまる一本飲む 朝からそんなに飲むのか・・・
村の牢屋に繋がれてる囚人の元に顔を出して、なにか声をかけるのかな、様子を見るのかなと思ったら、唾をぶっかける オエー
この囚人(身につけているものはパンツだけ)が何したか分からない(作中一切判明しない)けど、聖職者が唾ぶっかけるのはちょっと・・・囚人の見回りをしてるってことは、刑務所における教誨師みたいな立場でもあるだろうに、罪人だからと何してもいいわけじゃないし、汚ねぇし
立ち去る時には、村人に見せつけるよう、罪人の更生を願うように十字を切っている、外面はいいけど、中身は最悪な人の象徴なのかな?

いや囚人も密かに穴掘って脱獄企ててるんかーい
スプーンでえっちらほっちら・・・
周りの人に穴掘る音聞こえてるじゃん、よくバレないな。高所から互いに見張っているけど、近くまで行ってよく物事を見ていないってこと?
囚人でさえも(囚人だからこそ?)隠している秘密がある村か・・・
守銭奴さん、金貨じゃらじゃら、音で向こうの家の巨漢にバレてますよー
守銭奴は、囚人の穴掘る音を聞いているはずなので、普通に音が周りの人に響いてるって分かってると思うんだけど、それでも、俺は沢山金貨を持ってるんだぞ、というのを周りに知らしめる為に金貨ジャラってんのかな、嫌なやつだな。

あー男性がご飯を待ってるだけで、子供みたいに
カトラリーで机ガンガンする描写自分嫌いなんだわー(ここは、わがままだったり、男だからという理由で女に家事の負担を負わせている人とというのを表すためだからわざとなんだろうけど、微笑ましい家族の描写としてこういうのあるとちょっと・・・となる)

巨漢さん、金髪の奥さん(以下奥さん)が用意してくれたご飯を不味かったのか、吐き戻す。なんか緑色しかないので野菜オンリーなのかも

奥さん、自分は何も食べずに(もう済ましたのかも)カゴを持って外へ・・・

あー他人のことばっかり見て噂話するの大好きなバーさんっているよな

奥さん、外に出たのは薪を拾うためで、眼鏡さんと同じく働き者だねぇ、見つめ合うふたり
まぁあんな夫婦生活だと夫(巨漢さん)に愛なんか無さそうだしな

眼鏡さん、インテリっぽいけど、大木そのまま持ち上げてるし、結構力あるね?

眼鏡さんが、村の礼拝に行かない理由はなんなんだろう、神様を信じていない?
こういう田舎の小さなコミュニティで、集団と一緒の行動しないと、村八分とかにされそう、村八分まではいかなくとも、変わり者って言われて少し邪険にされてそうではある
(大草原の小さな家でお母さんが、日曜の礼拝に行かない人なんて信じられない的なことを言ってたし)

や礼拝中に、ぶどう酒飲むなて司祭。アル中か
ぶどう酒=神の血なら、司祭が飲んでばかりいるのは、権威性を持つ聖職者と教えの腐敗、村人を導く立場にいながら、不当に神の祝福や甘露ばかり享受している、甘い汁を啜る的な意味もある?

人目を忍んで、逢瀬を重ねる2人(眼鏡さんと奥さん)・・・あんな旦那でも一応結婚しているんだから奥さんの浮気ではあるんだけど・・・
この段階で抱きしめあってチューしてるってことはずーっと前々から、こういう間柄だったのかな
よくバレなかったなこの超(略)社会で、

バーさんが窓際に駆けつける足音を聞いて、村の外、畑の近くの茂みに分け入る二人、
でもその近くに奥さんの持ってた薪を入れるかご持ってたら色々と邪推されない?

二人の姿が見れずに、憤慨するバーさん、人間性が歪んでるなぁ。そんなに他人の様子を見たいのか
バーさん、あんた杖持ってるから足が悪いのかもしれないが、なんか家の中でもできる娯楽を探してみなさいよ・・・

また司祭登場、墓地の中で墓石に隠れてぶどう酒をまるまる一本飲む、アル中だ(確信)

巨漢さん、守銭奴の金貨を狙って窓から押しかけ、守銭奴を窓から放り投げてしまう!
全身打撲で死ぬとか一番嫌だな・・・

その物音を聞いた二人(眼鏡さん、奥さん)、眼鏡さん慌てて服を着ながら、守銭奴の死体の元に駆けつける
いや互いに素っ裸じゃねーか!とっくにそういう・・・・・・仲だったんですね

眼鏡さん、巨漢を問い詰めようと梯子に登って、おおいと声をかけると、その声で気づいたバーさんが、眼鏡さんが守銭奴を殺したのだ、と勘違いして村中大騒ぎ
いるいるいる声だけデカくて、ソースとか一切確かめなくて自分の主張が正しい根拠を元にしているか、間違ってるかどうか、一度も冷静になって確認しないやつ!!!!!!
まぁこの状況で勘違いするなと言う方が難しいのかもしれないけど、村の人たちもバーさんの言葉を鵜呑みにせずに、まずは裁判にかけるとかさ・・・十中八九公平じゃない裁判になるね、はい

奥さん、驚いて遠巻きにしか見ない、この状況で、彼がやったんじゃない!と言い出せば、今まで二人で何をしていた、と問いただされるだろうし、今まさに素っ裸だし

ふえーこのありんこ死体まで食うんか、分解者としての虫という生き物全体を表しているのかな

あー今まで眼鏡さんが大切に育ててきた木がー
この木って、育って実をつけるまで時間がかかるものだし、身に付けるのは大変だし、直ぐにその場で役に立つとは限らない知識の象徴なのかな?
実をつける木なのに、村人達はそんなことお構い無しに、眼鏡さんの絞首台にしてしまう
知識のない人達の短慮によって、それまで積み上げてきた知識が無駄になり、知識のある人は、自分で自分の首を締めることになる・・・というのは考えすぎ?

なんか村中がお祭りみたいな気分で嫌だな
殺人を犯した犯罪者に相応の罰を!というより、中世の死刑執行か娯楽だったのを見ている気分、いくら楽しみや娯楽の少ない田舎だからってさ・・・奥さんの協力によって眼鏡さん、脱獄に成功
村中なんか魔女狩りの最中みたいだ・・・

夜中、屋根の上で、眼鏡さんに気づいた巨漢を殴り、殺してしまう、その時に眼鏡さんの眼鏡も共に落下、奥さんと一緒に村から脱出する
巨漢の体は、ありんこに誰にも知られることなく食われていく・・・
翌朝になって、村人達が、近くに眼鏡の落ちた男性の骨を発見し眼鏡さんだと勘違いする
なんか、犯罪者が勝手に死んだ事よりも、絞首刑という一大イベントが無くなったことに対して、ガッカリしてそう。怖い
またいつもの、互いに互いを見つめる単調でつまらない日常に戻っていく。
その村の建物を、遠くの丘から見つめる、眼鏡さんと奥さん、こうして見るとあそこはなんて狭苦しくて、小さい世界だったのだろう

最後にまたありんこ、眼鏡が巣穴に戻るあり達の行列を止めてしまう
上記の、冒頭のあり達の行動の私的解釈を含めると、知識は、あまり物事を考えない集団にとって邪魔になるだけのものなのかもしれない・・・と、思ってゾッとした。

多分、このあと二人はよその大きな街に行って新しい人生を送るか、2人だけひっそりと森の中に暮らして生を終えそう。同じくらいの大きさの別の村か集落に身を寄せるなんて事は二度とないと思う。

この作品は、最後村から脱出し、外の世界へ歩き出す二人の姿で終わる。(こう書くと楽園から追われるアダムとイブみたいだ)
けれども、他の人にも村の外の世界を見ることはその気になればできたんだよね、でも眼鏡さんも奥さんも、守銭奴を殺したという勘違いの元で(巨漢は自業自得な面も殺してしまったような面あるだけど)「村に居られない」という大きすぎる理由ができるまで、村の外に行こうとはしなかった。
それほどまでに、人間は今までの行動を無意識に是とする。自分や自分の視点を変えるのは大変だ。

人間の潜在意識の暗喩的な行動描写に富みつつ、必要以上に難解なことも無くわかりやすい作品だった。
作者の伝えたい事が、スマートに伝わってくるけど、見る側の、これはこう言う事なのでは?という作品を解釈する際の醍醐味を否定せず、自由にさせてくれて、かつでも作者側の伝えたい事とそんなに齟齬を産まない、Markbakerは、凄いバランス感覚の持ち主なのでは、極限までシンプルにされたキャラクター造形と美術もそれに拍車をかけている

ここまで書いていて思ったんだけど、これただのあらすじ(というかストーリーの全容)紹介しているだけじゃない?大丈夫?
後で自分で見返して、ここのこういうシーンでこう思ったというのを書かないと分かりづらいので書いたんだけども。点数をつけるのは、個人的に苦手なのでやりません。
終わり。