パルメザンの感想記事まとめ

ストップモーションを使用している作品や、アートアニメーション、映画、映像作品の感想、解釈、妄想などを自分用に纏めるためのもの。 ここと同じ趣旨でやっているTwitter→@QNpzcHeyiagTnVV

※ネタバレあり※君たちはどう生きるか(私は一体何を見せられたんだ?)

バリバリにネタバレを含んでますので、ご注意ください

(新作見てから、この作品や監督に対してふっと思う事がある度に追記していますが、詳細な日付は一切記載していません。)

 

 


君たちはどう生きるか

不思議の国のアリスだったし、白雪姫筆頭にグリム童話だったし、杉井ギサブローの猫の銀河鉄道の夜(プリオシン海岸に通じる駅のタイルや内装にそっくりだった背景がある)の夜だったし、ポール・グリモーの王と鳥だったし、新海誠監督の星を追う子ども要素っぽいところもあったし、イザナギの黄泉下りだったし、生きて帰りし物語だったし、宮崎駿作品のキャラクターオールスターズスターシステム的要素があったし、それらの要素全部コミコミでちゃんとファンタジーの旅路を得て現実を直視して向き合えるようになるってお約束をこなしていた

 

なんだったんだ……マジで……映画終わったあと、誇張とか抜きに本当に放心していた

作品全体としては結構視聴者置いてけぼりで話がどんどん進んでいっていた感覚

(私の個人的感覚かもしれないが)

 

冒頭の大規模火災のシーン、日本のアニメーションで大規模火災を扱ったアニメ作品だと大友克洋のshortpeaceの「火要鎮」とか、それこそジブリ風立ちぬ関東大震災のシーンとかが有名だけど、それらと遜色ないアニメーションだったと思う

本当に眞人が家事の中に突っ込んで行ったのか、母親を助けられなかった眞人が繰り返し自分の中で育んでしまった呪われた夢では無いのかとも思う

現実なら眞人これ絶対身体中火傷して療養してるよね

燃え上がる=浄化の面があるけれども知り合いの家が家事になったことがあるので、火事をあんまり綺麗なものと描写されるのは少し複雑だが……

婆ちゃんたちは、最初七福神みたいだなと思ってたが、これブラウニーとか家に住み着く家事妖精のイメージの方が強いな

 

宮崎駿、本当に婆さん好きだな

眞人の母親が火に包まれて亡くなっていくシーンは、聖母の被昇天とか埋め立てられた塔に入り込もうと眞人が無理やりガレキと土砂の中に体を入れようとするシーンは胎内回帰的なものかと思ったが……

宮崎駿鬼子母神的なものにしても、聖母的なものにしても強すぎる母性本当に好きよな

父親の再婚相手の人(記憶力が悪いので名前を忘れてしまった)赤ん坊がいる喜びが勝ってたんだろうが、眞人にお腹を触らせるのちょっとデリカシーないな〜

 

地下に赴き産屋に入る、というのはイザナギが亡くなったイザナギを生き返らせて欲しいと黄泉まで行ったのに、黄泉の神とイザナミが相談中に腐った姿を見てしまい、裏切られたと感じたイザナミに追いかけられ、黄泉比良坂でよくも私を辱めたなお前の国の人間を毎日○○人殺してやると呪いをかけられたイザナギが、ならば私は1毎日○○個の産屋を建てようと言い返した神話を合体させたのか?と思った

 

 

身篭った体で地下に連れてこられて、産屋で赤子を産まさせるのは、産まれた子を世界の調整役の大叔父の後継者にするため?

というか大元の塔がある日それから降ってきたのは正直安直かつ突飛過ぎたな

世界の管理者、調整役、神として君臨し続け仕事をこなすのに疲れた

大叔父はこの世界を終わらせる口実が欲しかっただけなんじゃないのか

悪や悪い心がなくとも、その余地に良きものが入り込んだり新しきが自然発生する訳ではなく、ぽっかりと幾つもの穴を抱えて歪なまま世界は運行していくのかもしれない

現実なら善と悪もそれ以外の概念も常に混沌としていて太極図が食い合うように存在しているから、成り立つけれども、なにかの要素が欠けている世界はその分運営者が介入しないと均衡がとれなくなりすぐ滅ぶ(ちょっと原作ゲド戦記ぽい)

それがあの絶妙なバランスで成り立っている象徴的な積み木なのでは

 

産屋で眞人に対してあなたなんか大嫌い!って言うのは、危険な場所から早く出ていって欲しい親心でキツく言ったんだろうが、相手の前妻との間の連れ子だから気に入らないって気持ちがほんの少しはありそう

ちょ待てよキムタク、キムタクが声優でいるじゃん

眞人が、礼儀正しいけど親の気を引きたかったのかむしゃくしゃしたのかなんなのか、石を使って自分で大怪我するという不安定な部分もあるクソガキでなんか安心した節がある

鏑矢が効いていたってことは鷺男は「魔」に該当する存在なのか

眞人自作の矢が効いたのは、人間の唾が魔除になるから澱粉ノリとして咀嚼したコメをつけた時のやつかなと思ったが、単に羽が持ち主に帰ろうとしてるだけなのか、風切りの7番……?

傷つけたものしか傷は癒せないのはなにか御伽噺の定番っぽい匂いを感じたが、ぱっと思いつく話がないな

 

鳥に地底の国(この作品では異界、常世、幽世、黄泉、根の国を全部ひっくるめた処だろうか)道案内させるて、自分でカリオストロの城のオマージュだけで終わらせたくなくて「王と鳥」を再構成して作りたかったのかな

最後に王国を崩壊させるの意味合いが、「王と鳥」のラストをなぞるオマージュの意味合いじゃなくて、破滅のカタルシスがある山尾悠子作品みてーだった

……鳥の王自身に王国どころか世界を終わらせるって、絵に描かれた王自身の暴挙(ロボット操作)で城が破壊されていくラストを描いたポール・グリモーに対してなんかすごく皮肉っぽいんだが、でも、 鳥たちの王は民にも部下にも慕われていたし少なくとも臣民にとっては暴君じゃなさそうだしなー

短期で愚かな部分がありそうだけど

公開前はタイトルで説教要素があるなんて持て囃されたけど、無理にその要素を拾い上げるなら、王と鳥の横暴なシャルル王のように理想的に作り上げた閉じた世界に閉じこもってもいつか崩壊するもので、いい加減オタクに現実に帰れって言われる今敏監督の「妄想代理人」ぽいところか?

言うほどタイトルの、視聴者にこれからの生き方を問いかけるような要素やタイトルの元になった書籍の要素はさほど強くなかったなーという印象

本がストーリー上の物理的なキーアイテムになるわけでもなかったし

あと人食い凶暴インコが大量に出てくる……公開前の自分にこんなこと伝えても絶対嘘だって思われるな……

 

別に新作を見た上でそう思った訳ではなく、もうずっと前から思ってたけど、もう日本アニメ史上これほど才能のある人間は現れないだろうなと思う

 

 

ヒミ様のドカ盛りジャムパン狂奏曲 (元ネタかふちゃんのかれーうどんきょうそうきょく(ネタバレ踏むの嫌な人のための検索避けひらがな表記) 眞人にマーガリンとジャムドカ盛パンを食べさせているところで既にヒミは目の前の男の子が未来の自分の息子だと気づいていたんだろうなぁ、大切な者に食べ物を食べさせる行為は愛や母性そのものだなと考えていたのに何故かこんな絵になった